A,Bに重複部分がない場合の確率は前回で求めた。ここから先──当確率論の本題──は重複部分が"ある"場合を取り扱う。
まずは次の表から。
A\B |
BかつAでないカードを1枚以上引き当てる |
AかつBであるカードを1枚以上引き当てる |
AかつBでないカードを1枚以上引き当てる |
C |
D |
AかつBであるカードを1枚以上引き当てる |
E |
F |
「Aを1枚以上引き当てる」ことは「AかつBでないカード」または「AかつBであるカード」を引き当てることと同じ。Bについても同様だから、表のように2×2=4通りのパターンが存在する。表中のC〜Fはそれぞれ4通りのパターンに対応している。ただしこれらには重複ケースがあって、例えば「AかつBでないカード」を1枚、「AかつBであるカード」を2枚引き当てたら、表の記号で言うとC,D,Fの3つに該当することになってしまう。こういうパターンがあると「Cの確率〜Fの確率をすべて足せばよい」という話にならない。今の例のように重複部分をダブって数えてしまうことになるから。そこで「重複部分を排除する」という操作が必要になってくる。
そのために論理記号を導入しよう。
A,Bといったとき、A,Bの重複部分もそれに含まれている、というのが今までの語法だったが、ここからは次のように書き換える:
a |
AかつBでないカードを1枚以上引き当てる事象 |
b |
BかつAでないカードを1枚以上引き当てる事象 |
ab |
AかつBであるカードを1枚以上引き当てる事象 |
aと書いたとき、Bとの重複部分を暗黙のうちに除外していることに注意。これはbにも同様で、Aとの重複部分を暗黙のうちに除外している。
これらの記号を用いれば論理式を使うことが出来る。
or(または)に+(プラス)を、and(かつ)に.(ドット)を対応させることにすると、例えばaを一枚以上、bを一枚以上といった事象は
a.b
と表記できる。事象の否定(not)はシングルクォーテーション(')を用いて表すことにする。これをプライムと言って、aの否定はaプライムなどと読む。
さて、このような記号を使えば、表中のCは次のように書き換えられる。
同様にDも論理記号化するのだが、C=a.bとの重複部分を排除しなければならない。これは
(a.b)'.(a.ab)
とすればよい。ド・モルガン則で展開して
(a'+b').(a.ab)
=a'.(a.ab) + b'.(a.ab)
a'a=o(空集合)だから第二項のみが残って
= b'.a.ab
となる。これがDにあたる。先の表を書き直そう。
A\B |
b |
ab |
a |
a.b |
b'.a.ab |
ab |
E |
F |
同様にE,Fを書き換える。それぞれ
E = (a.b)'.(b'.a.ab)'.b.ab
F = (a.b)'.(b'.a.ab)'.(E)'.(ab
2)
とすればよい。ここでab
2は「AかつBであるカードを
2枚以上引き当てる事象」を意味する(ことにする)。これを解くと
E = a'.b.ab
F = a'.b'.ab
2
となり、表に戻して
A\B |
b |
ab |
a |
a.b |
b'.a.ab |
ab |
a'.b.ab |
a'.b'.ab2 |
となる。以上の操作によって重複部分が排除されたので、後は
P(a.b)
P(b'.a.ab)
P(a'.b.ab)
P(a'.b'.ab
2)
を単純に足せばA,Bに重複部分がある場合の確率が求まる。これが二項の場合。三項の場合は次回。
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